弁護士の池田賢太です。

 私が理事を務める、日本国際法律家協会(JALISA)が、新年早々に行われた、アメリカによるベネズエラへの軍事攻撃に対する抗議声明を発出しましたのでご紹介します。

 この声明でも表明している通り、アメリカのベネズエラに対する攻撃は、国際法に違反するものであり、決して許されるものではありません。
 私自身は、台湾有事の脅威をあおる言説に与するものではありませんが、アメリカの今回の軍事行動を許せば、同じ行動を中国が台湾に対して行うことだって許容されてしまうことになります。台湾有事を懸念するのであれば、なおのこと、今回のアメリカの行動に強く抗議することが、日本政府には求められると考えています。

2026年1月3日の米国のベネズエラに対する軍事攻撃、マドゥロ大統領夫妻の拘束、米国への連行、収容を強く非難する。

日本国際法律家協会(JALISA)

2026年1月6日

 今回の米国による軍事攻撃は、国連憲章2条4項の重大な違反である。同条項は、各国に対し「国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しないその他いかなる方法によるものも慎まなければならない。」と定めている。今回の米国のベネズエラに対する軍事攻撃は、同条項違反であり、侵略戦争に該当する。米国の軍事攻撃は、国際法上、法的根拠は全くなく、武力行使の例外規定にも該当しない。また、自決権の侵害、内政不干渉の原則違反でもあり重大な国際法違反であることは明白である。

 さらに、米国は、マドゥロベネズエラ大統領夫妻を拘束し、米国へ連行し、刑事施設に収容したと公表した。このようなマドゥロ氏夫妻に対する自由の拘束は、誘拐に他ならず、国際法の明白な違反であり、国家主権の侵害であり、また国際犯罪に該当する。

 また、トランプ大統領は、今後は、「適切な政権移行」が実現するまでベネズエラを米国が運営すると発言している。このようなことが認められれば、他国への重大かつ明白な内政干渉を認めることになり、ベネズエラの主権を侵害し、国際法違反の暴挙となる。

 米国のこれらの行為は、いずれも国際法の基本原則を無視した行為で、国際犯罪を構成するとともに、国際社会における法の支配を破壊するものである。

 今回の米国の軍事行動の目的の一つは、トランプ大統領も認めている通り、埋蔵量が世界有数の石油資源を米国の支配下に置くことにある。これは、米国によるベネズエラの植民地支配を彷彿とさせるものであり、米国の帝国主義的支配を図るものといえる。

 高市政権は、このような米国の軍事攻撃等の暴挙に対し、国際法違反、主権侵害を指摘することすらしていない。このような高市政権の消極的姿勢は、米国の暴挙に加担することにつながるものである。また。「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」いう日本国憲法前文の趣旨に反するものである。

 日本政府は、米国に自制を求め、国際法秩序を遵守するように強く求めるべきである。

 私たちは、米国に対し、今回の軍事攻撃を断固非難するとともに、国際法を遵守して、武力攻撃を無条件に停止し、将来にわたる軍事的介入を禁止すること、マドゥロ大統領夫妻を直ちに釈放し、安全な帰還を保障すること、ベネズエラの主権を尊重し、内政干渉をやめるべきことを強く求めるものである。